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歴史と本と翻訳と ~つばめ翻訳~

個人事業者つばめ翻訳。翻訳をめぐるあれこれを書いたり、海外記事を翻訳したりしています。

一瞬忘れてまた前に進む。

年が明け、早くも半月近くたってしまいました。みなさま、今年もよろしくお願いいたします。

多くの人がそうだと思いますが、年末年始は仕事人として締め切りに追われると同時に、「家庭人」であるために対応に迫られるイベントも多く、気ぜわしく過ごしていました。

ぎりぎりでつながっている生活の糸を切らさないためには、日常から一瞬「気をそらす」ことが肝要だなと感じます。私にとっては本や映画や絵画作品を鑑賞することがその手段のひとつです。それらの世界に入り込むと、目の前のやらねばならないことやうまくいかなかったことを一瞬忘れ、精神の力がわずかながらよみがえり、また前に進んでいけるように感じます。

年末には夫の実家にもお邪魔し、特に気が張っていましたが、夜子どもが寝入った後に慣れないふとんの中でkindleで本を読むのが何よりの楽しみでした。悩みもがきながら真実やよりよい世界に向かおうとする人々と共に奮闘している気分になったり、ぞくぞくする展開に「次はどうなる!」と呼吸を浅くしてページを繰ったりしていると、物語に吸い込まれて一瞬自分の日常を忘れていました。

*読んだもの
川内有緒さん『パリの国連で夢を食う。』、『パリでメシを食う。
C. J. ボックス『発火点
朝井まかてさん『悪玉伝
アリスン・モントクレア『ロンドン謎解き結婚相談所 』など。

普段は見るのにエネルギーが必要な映画も、この年末年始は私にしては珍しくあれこれ鑑賞しました。
レベッカ
イミテーション・ゲーム
THE有頂天ホテル
コンフィデンスマンJP ロマンス編
ハスラーズ
清須会議
引っ越し大名!

子どもが生まれてからずっと「疲れているなら早く寝たら」と夫や母からは言われるのですが、自分の好きなことに一瞬没頭する時間も生きていくためにはどうしても必要なのです。その「一瞬」を感じると、不思議と脳の疲れが楽になっています。フィクションの世界はこういう力を持っているから、人間にとって大切なんじゃないかなと思います。

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13歳

先日、中学以来の友人と久しぶりに会って、5時間ずっとしゃべりっぱなしというとても幸せな時間を過ごしました。

出身小学校が違い、中学校でも一度も同じクラスにならなかったのに、ひょんなことから話すようになり、かれこれ四半世紀以上行き来しています。やりとりの手段は、折り紙のようにたたんだノートの切れ端から、郵便、携帯メール、LINEと変わりましたが、常に心のよりどころであり、私が臆面もなく「親友」と呼べる貴重な存在です。

その友人の一番上のお子さんが生まれたのはちょうど私が結婚式を挙げる2か月前で、誕生直後のお正月に夫と二人で顔を見に行かせてもらって以来、陰ながらずっとその成長を見守ってきました。抱き着いてきて、あかちゃんの重みと愛おしさを教えてくれたこと。不思議そうに、コーヒーをドリップする様子を見つめていた顔。夫が一眼レフで写真を撮って、身内でもないのに引き伸ばして家に飾っていたこともありました。お互いの生活が少しずつ変わって会うことも少なくなりましたが、友人を通して彼の成長をうかがっていました。

私の記憶の中ではせいぜい小学校の高学年止まりだったその子が、先日友達を迎えに行ったときに久しぶりに顔を合わせたら、なんと母親である友達よりも身長が高くなっていました。幼かったころの面影を残しながらも顔立ちはしゅっとしているし、声も低くなりかかっている。子どもと呼ぶのははばかれる、青年期の入り口に立っていることを感じさせる姿を見たら、目の前と頭の中でクラッカーか花火が一斉に爆発したようなおめでたい気分と驚きが押し寄せて、なんだか涙がにじみました。彼は今、中学1年生。私と友人が出会ったときの年齢になっていました。

あかちゃんのころから知っている子が中学生になったことで、「こんなに大きくなって!」と成長を感じた一方、まだ線の細さも残る彼の立ち姿から、友人と私が出会った「13歳」という年齢はこんなにも幼いものであったのか、とも感じました。彼の向こうに、13歳当時の友人と私が重なりそうで、重ならないような。不思議な感覚でした。

子どもと大人のはざまにあたるこの時期に出会った友人と、人生の節目節目を分かち合いながら20数年間ともに過ごしてこられたことは、本当に幸運だったと思います。彼が今の私たちくらいの年齢になったころ、こんなふうに友達と何時間も話して昔のことを振り返ったりするんだろうか。その姿を思い浮かべると、また不思議な気持ちになりました。

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洗濯はPodcastとともに

先日の「フリーランス翻訳者の余裕のない一日」の記事でもちょろっと書いたのですが、朝洗濯物を干すときはたいてい英語圏のPodcastを聞いています。真剣にリスニング力を鍛えよう!というほどの熱意ではなく、この後始める仕事に向けて少し自分を英語に慣らそうかな、という程度の気持ちです。

基本は、NHK WORLD Radio JAPAN。日本の媒体ですでに見聞きしていたニュースを英語で聞き直す機会になり、「こういうときはこの単語を使うんだ」と確認できます。例えば、毎日の天気予報コーナーでpressure systemという言葉が何度も使われていたことから、「気圧配置」をそういうのだと知りました。最近では、眞子さんがおっしゃった「心」という言葉が"mental well-being"と表現されていたのが印象に残りました。well-beingは和訳案件でも訳しにくく、表現に迷うことがあったからです。実際の文脈・背景の中で単語に接すると言葉に対する理解が深まり、記憶に残りやすいように思います。

海外(アメリカ)のニュースを聞きたいなと思う日は、CBS Mornings Podcast。米国三大放送会社のひとつCBSのニュース番組です。放送局のPodcastはたくさんありますが、どちらかというとリベラルなほうの番組が聞きたいなと探してこちらにたどり着きました。朝のニュース番組なので、軽やかなトランペットのファンファーレで始まります。日々のニュースのほか、有名人のインタビューが放送される回もあり、そのときは米国人がナチュラルスピードで会話しているのを聞いていることになるため、私はほとんどついていけません。

時事英語ではなく軽めの内容を聞きたいときは、All Ears English。これは、美容院でたまたま読んだ雑誌で知りました。30代の働く女性をターゲットにしたBAILAで、英語の勉強におすすめなPodcastのひとつとして紹介されていたものです。ノンネイティブの英語学習者向けに特化したPodcastで、ネイティブ向けのものに比べると聞き取りやすい発音・スピードで話しています。アメリカの陽気なALTや語学学校の先生が毎回色々なテーマで楽しく話してくれているような印象です。私の場合、NHKやCBSはちょっと気合を入れて聞いていますが、こちらは疲れている朝でも肩ひじ張らずに聞けるのがいいなと思っています。

ニュース番組とは違う角度で聞きごたえがあったのが、スミソニアン博物館のPodcast、Slidedoor。アメリカの知が集まっているスミソニアンらしく、さまざまなテーマをさまざまな観点から解説しています。例えば、先日のテーマは絵文字、そのひとつ前の回はハーブでした。一方的な解説ではなく、二人のホストによる対話形式で話が進んでいくので、ドキュメンタリーを見ているような感覚で知的好奇心が満たされます。ただ、ひとつのテーマにかなり深く突っ込んでいくということもあってか、語彙が専門的で、私にはついていくのがけっこう大変でした。

変わり種としては、Primary Sourcesも好きです。英国の歴史学者Joanne Paulさんがホストになって、同業者のみなさんに「なぜ歴史の専門家になったのか、どういうアプローチで自分のテーマを研究しているのか」を聞くPodcastです。歴史が好きなので、小説やドキュメンタリーや映画のヒストリカル作品をはじめ、歴史愛好家のブログやアーカイブスのウェブサイトなど、歴史に関するさまざまなコンテンツに接してきましたが、研究者自身の歴史を知ることができるものはあまりなかったので新鮮です。同じ歴史好きな人がどうやってそれを仕事にしたかを聞けるのはとても興味深いです。


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フリーランス翻訳者、待機児童を持つ親になる

「フリーランス翻訳者の出産・仕事復帰体験談」の続きです。

施設を見に行かないことには保活が進まないことを悟り、出無精の私もついに子どもを連れて園に見学に行くことにしました。

子どもの保育・教育で数年間お世話になるので、できるだけ多く施設を見学して検討したいと当初は思っていましたが、あまり多く見ても迷うばかりで決められないと途中で気づき、結局見学したのは

子育て支援の場を運営している保育園・幼稚園:計4か所
前年にできたばかりの新設の保育園:1か所
公立の保育園:1か所

となりました。

私の居住自治体では、入園申込書の希望欄が第3希望までしかなかったことも、見学数を最低限に抑えることになった理由のひとつでした(入園申込書にいくつまで希望する園を書けるかは居住自治体によってだいぶ違うようで、関東に住んでいた妹は15近い希望を書いたと言っていました。10件以上も施設を比較検討して順位をつけるのも、なかなか大変だったようです)。

災害時や子どもの急な体調不良時などのために自宅から近い施設にしたかったので、見学に行った園の印象と自宅からの距離を勘案し、第1~3希望まで園を決めて、書類をそろえて市に提出しました。8月か9月のことでした。

とりあえず年度途中で入園申し込みをしたものの、このときは自治体全域で探しても空きのある園はほとんどありませんでした。自宅から遠く離れた園でもいいからとにかく預けたい、という状況・気持ちではなかったので、希望条件に合った園に入れるようになるまでしばらく待機することを覚悟したうえでの申し込みでした。このときに、わが子も待機児童の一人となったのでした。

ほとんど入園の見込みのない年度途中に申し込んだのは、半年間待機すると施設利用者の選考基準となる持ち点が加算されることを考えてのことでした。人の動きがある4月は比較的入園しやすいと聞いていたので、新年度の入園児が選考されるタイミングで加算されて少しでも入りやすい条件が整うといいなと考えていました(実際は、前年度から持ち上がる子どもたちが大半のため、新年度にぐっと入園しやすくなるという状況ではありませんでした)。

保育園への申し込みについては、申込者を持ち点が高い順に施設ごとに並べて、各施設に空きが出たら持ち点ランキングでトップにいる人から順番に入園内定者を決まります。このとき、希望の高さ(第1希望か第3希望か)よりも持ち点の高さのほうが優先されます。例えば、その施設に第1希望で申し込んでいる人よりも、第3希望で申し込んでいる人で持ち点が高い人がいれば、後者のほうが先に内定するとのことでした。

散々迷って悩んで書類を提出してまもなく、10月には早くも新年度分の入園申し込みをする時期がやってきました。年度途中の入園希望は年度をまたいで繰り越されないため、あらためて翌年度分の申し込みをする必要があったからです。4月入園を希望する場合は前年の10~11月に動かなければならないというのは、うっかりしていると気づかないで過ぎてしまいそうでした。

2度の書類提出を経て待機し、新年度から入園できることになったという通知が届いたのは、年明けのことでした。

お読みくださってありがとうございました。
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定訳の裏取りのこと(チェック担当のつぶやき)

あちこちのでっぱりをちょちょいとつついて積み木のタワーをまっすぐにするような、すい~っとかんなをかけて指先でしかわからないざらつきをなめらかにするような、そんな感覚になる翻訳チェックの仕事がけっこう好きです。「ほぼリライト」というような大変な案件にはこれまで当たってしまったことがないので、こう言えるのかもしれません。

私が発注していただくのは英語ネイティブの方が訳した日英翻訳のチェックが多いので、原文の意味の取り違えがないかを日本語ネイティブとして確認することを中心に、誤字・脱字・訳抜け・固有名詞等の裏取りなどを行います。翻訳者の方が仕上げてくださったものを第三者の目で見て、品質を高め、保証する仕事。チェック業務は英語で「quality assurance (QA) check」と呼ばれることがありますが、まさにそのような認識で担当しています。

これまで翻訳講座やアメリアの定例トライアルの解説・添削を受け、翻訳フォーラムなど業界関連のイベントで先輩方のお話をうかがってきた中で、組織名や人名などの固有名詞、該当分野での定訳は翻訳段階で確認し、翻訳者が責任をもって訳文に反映させるものだと思っていました。どうしても定訳の裏取りに至らなければ、それはコメントなりで申し送りをし、次の段階を担当する人に確認を依頼するものだと。既存の定訳と統一することが書き手の意図した情報を読み手に正確に伝える一助になりますし、逆にターゲット言語の名前を自分で編み出せるからと公的な情報を無視すれば、読み手が混乱してしまう可能性もあります。信頼できる情報源で定訳がすんなり見つからず、時間がかかって納期との戦いになることもありますが、事前に依頼者から特別な対応が指示されていなければ、定訳の確認をしながら訳すのが基本と思って翻訳の仕事をしています。

しかしこのところ、チェックを担当した際に、定訳を確認していないのかも? と思うような文章と出会うことが度々ありました。チェック案件を受けるときには、公的な情報を訳出時に確認しているものと思って工数を見積もっているため、いざチェックを始めてからオリジナリティーあふれる訳文であることがわかると焦ります。しかるべき情報源で裏取りをしていない(と思われる)場合は、名詞の確認と統一だけでかなり時間を取られ、訳文全体の品質を十分に保証するのが危ぶまれるときもあります。

こういう状況になった場合、その「オリジナル具合」や用語集の有無などによって、翻訳を担当した方に一度戻して用語をそろえてもらおうか、納期の延長や報酬の上乗せを交渉しようか、など色々な対応策を考えますが、すでに案件が走り始めてしまった後では気が引けて、納期に間に合わせるために泣く泣くそのまま仕事を進める、というときも正直あります。このようなことにならないように、打診を受けたときに「表現を統一すべき用語集や情報源の指定はあるか」などを確認するようにしていますが、そのとき「ある」と回答されたにもかかわらず、訳出時にその資料と統一していなかった、ということもありました。

「訳出時に1回、チェック時にもう1回情報源を確認する」のと「訳出時は自由に訳して、チェック時に公式な情報とそろえる」のとでは、どんなにチェック時に調査を綿密に行っても、仕上がりの品質にやはり差が出てくると思います。けれど、「翻訳するときに用語を統一して!」と言ってしまうのは簡単ですが、昨今の短い納期に間に合うように訳すためには、用語統一のためのリサーチ時間が限定されてしまうという事実もあります。訳出のタイミングだけに用語をそろえる負荷を集中させるのではなく、翻訳の仕事の上流から下流までそれぞれができる予防策を行うと、用語が適切にそろった翻訳に仕上げやすいのではないかと思います。例えば、

・翻訳発注者:用語集を支給する、表現の基準となる資料があれば共有する(特に固有名詞の多い原稿)
・翻訳仲介業者:用語集・資料の共有について発注者と相談する、翻訳者に用語の統一について事前に周知する
・翻訳担当者:用語統一の有無について自分から確認をする、信頼できる情報源での確認を大切にする、適切に申し送りをする
・チェック担当者:見積時に用語統一について仲介業者に確認する、信頼できる情報源で裏取りをする、裏取りできなければ適切に申し送りをする
などなど。

何より、自分が翻訳を担当するときにはきちんと情報の裏取りをしようと肝に銘じつつ、今日も人さまの訳文にかんなをかけています。
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