歴史と本と翻訳と ~つばめ翻訳~

個人事業者つばめ翻訳。翻訳をめぐるあれこれを書いたり、海外記事を翻訳したりしています。

The Taming of the Queen (読書の記録)

フィリッパ・グレゴリーのThe Taming of the Queen(仮訳:王妃の調教)をようやく読み終わりました。
『ブーリン家の姉妹』の作者の本です。
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(※画像は版元よりお借りしました。)

今作の主人公はヘンリー8世の王妃キャサリン・パー。
ヘンリーの6人の妃のなかで唯一生き延びた人物です。
主人公は生き延びるし、年老いたヘンリーも少しは丸くなっているだろうと思って
ある程度明るい内容を想像して読み始めたら、逆にとんでもなく恐ろしい本でした。

フィリッパ・グレゴリーの作品は何冊も読んできましたが、
作中の「いい時期」と「悪い時期」の描写の落差にいつも圧倒されます。

王に愛され、宮中でかしづかれる
主人公にとっての「いい時期」の描写には黄金色の輝きを感じます。
主人公と一緒になってその明るさを味わっていると、
突然暗黒の世界に突き落とされて心臓がぎゅっとなる。
味方だった人が敵になり、侍女が減っていき、王と会えなくなっていく。
『ブーリン家の姉妹』から続いている
このThe Plantagenet and Tudor Novels(プランタジネットとチューダーの物語)シリーズでは、
そうやってどの主人公も黄金色のしあわせを感じたあとに暗闇でもがき、
そして命を落とす人が大半です。

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薔薇の名前

数か月かけてぽちぽちと読み進めていた「薔薇の名前」を、ようやく読み終わりました。

1351.jpg
(画像は版元よりお借りしました)

読み始めたきっかけは、今年のはじめに原著者のウンベルト・エーコの訃報に接したこと。
そこで「薔薇の名前」の存在を知り、
歴史好きの端くれとして
これを読まないわけにはいかないだろう、と思って
読み始めました。

正直いって読みやすい本ではありませんでした。
一文が長いことが多く、文体にもとても癖があるように私には感じられました。
でも、無理やり読んでいるうちに
なんだかその「癖」が味わい深いような気がしてきました。
原文はわからないけれど、エーコ自身も癖のある書き方をしていて、
訳者はそれを忠実に再現しようとしたのかな、とも思いました。
(訳者あとがきの雰囲気もちょっと独特だったので、
この辺りは定かではありません。
エーコの文体なのか、訳者の文体なのか)

なんとか読み切ることができたのは、
下訳に取り組んでいる書籍もけっこう歯ごたえのある内容で、
その本と格闘しているうちに
最近なえていた「読書筋」が少しばかり鍛えられたからかもしれません。
「わからない」ということを脳が楽しんでいるような、
「わからない」ことをそのまま受け止める練習ができていたというか。

と言いつつ、途中の宗教論争などのところはどうしても歯が立たず、
あらすじに迷わない程度に読み飛ばしてしまった箇所もありました。

一番おもしろかったのは、
やはり謎解きの現場となる修道院の図書館の描写です。
「古書の来歴」や、ツイッターで見かける羊皮紙の落書きなどを思い出しながら
読んでいました。

写本といえば、
今、丸善日本橋店で
西洋写本と書の世界」という展示が行われているそうです。
2016年7月5日(火) まで。
羊皮紙に鮮やかなインクで描かれた絵と文字、
本当に見たいけれど、今回は上京するのが難しそう…。
もし行かれた方がいらっしゃったら、ぜひ感想を聞かせてください!

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三谷さんのエッセイ ―「絵を描く」こと―

夫につられて見始めた「真田丸」がおもしろいので、
三谷幸喜さんのエッセイを図書館で探したら、
ちょうど「大河な日日」という1冊がありました。

1824.jpg
(画像は版元よりお借りしました)

軽妙な語り口で、気分転換にぴったり。
自主的に休養日にした午後に、一息に読みました。

三谷さんの描写は細かくてユーモラスで、
読んでいるとその人の動きが頭に浮かんできます。

例えば、こんな場面。

「特に目を引いたのが佃煮の蓋の瓶を思わせるミニミニシンバル。
これは二つをぶつけて音を出すのだが、
チーンとやった後に、必ず空気をかき回す仕草が入る。
そうやって音の余韻に微妙な強弱をつけているようだが、
それがお箸についた納豆の糸を払っているみたい。」
(P51-52)

空中に広がっていく音を拡散するように、
すばやく軽やかに腕を動かしている様子が浮かびました。

こんなにイメージしやすい文章を書くなんて、さすが三谷さん、
と思いながら読み進めていると、別のページにこんな一文がありました。

「小説家と違って、僕たち映像の人間は、
すべてを具体的に表現しなければならないので、
まずビジュアルで考えるのだ。」(P97)

脚本家が「ビジュアル」から入る仕事だと
今まで考えたことがなかったので、
新鮮な驚きを覚えました。


先日の翻訳シンポジウムでも、
「絵を描くのが大事」というお話がありました。

原文を読んで絵を思い浮かべること。
絵がうまくイメージできないときは理解がまだ足りない。

原文から思い浮かべたのと同じ絵を
訳文を読んだ読者が思い浮かべられるように訳文を書くこと。
それが過不足のない訳文。

言葉が好きで文字が好きで、この仕事をやっていますが、
翻訳者にも脚本家並みのビジュアル力が必要なのでした。
書かれている場面と、原著者の頭の中をイメージする力。
難しい…!

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「海の向こうに本を届ける」

2014年になって初めて投稿いたします。
みなさま、どんな年明けをお過ごしでしょうか。
今年もどうぞよろしくお願いいたします

さて、昨年から年をまたいでこの本を読んでいました。
20140106.jpg
(画像はAmazonよりお借りしました)

著作権エージェントとして
日本の本を海外に売り込むために奔走してきた女性の自叙伝。
栗田さんは小川洋子さんの作品を海外に紹介した立役者でもあります。

ページをめくりながら今までに読んだ海外作品が頭に浮かび、
「あの本の後ろにもこんな人たちがいたんだな」と思いました。
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