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つばめ翻訳のブログ

在宅フリーランスで翻訳業をしています。翻訳の仕事、勉強、イベント、読書と言葉について書いています。

翻訳業を始めるまでに

先日、ブログにコメントをいただき、その方のご質問とは直接関係ないのですが、「翻訳業を始めたいと思っている人にこれからどう準備すればいいか聞かれたら、今の私ならどういうふうに答えるかな」ということをしばらく考えていました。

機械翻訳の台頭、単価の低下などもあり、この業界への参入をなかなか勧められない、という声も見聞きします。「若い人の生活が立ち行かない状況になる可能性もある仕事だから勧められない」という人もいるというのは、翻訳業界の厳しい一面だと思います(個人事業にはどんな業種でもそういった要素があると思いますが)。無責任かもしれませんが、生活していけるかどうかはご本人の情報収集とご判断に任せるとしたら、翻訳業に魅力を感じて仕事として続けている身としては、「翻訳を仕事にしたい」という思いに寄り添いたいと個人的には思っています。

〇翻訳業に飛び込む前に(以下、英語の翻訳を中心に書いていきます)
「大学や仕事で英語を使っていて、英語関連の資格や点数も色々と持っている。今の自分で翻訳業につけるだろうか」と聞かれたら、私だったら「自分の翻訳の商品価値についてどう思う?」と聞いてみて、その答えによって今後どんな準備をしていくのがいいかアドバイスをするかなー、と今のところ考えています。

「訳文に商品価値があるとはどういうことか」、「自分の翻訳は商品としてどうか」などについて思いをめぐらしてみて、はっきりとした答えが出せないときは、実際に翻訳の仕事を始める前にもう少し準備が必要なのではないかと思います。逆に、自分の訳文の商品価値が客観的にわかっていれば、トライアルに受かったり継続的に仕事を受けたりという状況にスムーズに到達できるのではと思います。

「商品としての翻訳にどういったものがどんなレベルで求められるのか」は、仕事として翻訳をしてみるとわかってくることも多々ありますが、翻訳講座やコンテストの課題に取り組むことでも身につけることができます。人(プロ)に自分の文章を添削して評価してもらい、訳例と比べることで、自分の翻訳に足りないところを認識してスキルに追加していくという経験は、翻訳者になるためにとても大切なステップだと思います。「実務としての翻訳では(ビジネス、出版含め)どういう訳文が求められるのか」、「意訳、補足のさじ加減はどのくらい許されるのか」といったことも、課題提出を繰り返していくことでだんだんとわかってくると思います(案件や分野によって変わってくる部分もあります)。

〇英語力以外に必要なもの
「英語が読めて訳せる以外に何が必要か」、「物理的な準備としてはどういったものが必要か」といったことについても、知識をつけておいたほうが安心です。おすすめ情報源は下記のとおりです。

・業界誌
「通訳翻訳ジャーナル」、「出版&映像翻訳完全ガイドブック」、「通訳者・翻訳者になる本」、アメリアの会報など
・業界団体のサイト
日本翻訳者協会(JAT)、日本翻訳連盟(JTF)など
・先輩翻訳者の方々のSNS
YouTube、Twitter、ブログなど

私も、こういったところを読んでいるうちにだんだんとイメージが固まってきて、環境整備などにどのくらいお金や時間が必要かや、作業の効率化に必要なツールや知識が具体的に見えてきました。

信頼のおける情報源を見極めることも大切です。翻訳では、学習段階でも実際の仕事でも、情報の信頼性は欠かせない要素です。経済的、家庭的な事情から効率よく翻訳業界に入りたいと思う方こそ、情報収集には時間をかけ、信頼性を見極めたほうがいいと思います。「簡単に翻訳者になれる」、「主婦業や本業の合間に翻訳の仕事ができる」などとうたう情報源は、翻訳者の実態とはかけ離れているのでおすすめしません。

〇英語ができても翻訳ができるとは限らない理由(ごく個人的な意見です)
言葉というのは不思議なもので、母語の場合、普段使っている分には「なんとなく」でも十分に意味が通ります。母語で書かれた新聞や小説を読んでいると、そこに書かれている一語一句の意味を知っているわけでなくても、時折無意識に知らない単語を飛ばしたりしつつ、読み通すことはできます。(「なんだかよくわからない本だった…」と読後に思うこともありますが)。翻訳だとそうはいかないというところが、英語ができても翻訳ができるわけではない理由のひとつではないかなと思っています。自分以外の人が書いた文章を別の言語で自分以外の人にもわかるように書き直す(翻訳する)には、一語一句意味を理解していることが必要です。わからなくても、辞書や資料やネットを使って調べて答えを出していきます。冠詞や句読点のひとつひとつまで意味を理解して、人に説明する場面もあります(チェック時のコメントを入れる、翻訳会社やクライアントからの問い合わせに答えるなど)。英語を使って授業を受けたり仕事をしたりしていてもすぐに翻訳ができる人ばかりではないのは、翻訳は言葉を「なんとなく」使うのではなく、言葉のひとつひとつに肉薄していく営みだからではないかなと思っています。

〇自分の語学力でどのレベルの翻訳講座に入れるか?
前パラグラフに書いた理由から、こういった質問にお答えするのは私はとても難しく感じます。海外経験がある方が誰でも上級講座から受けても大丈夫だとは限らないからです。講座によっては目安として英検やTOEICなどの点数が書かれていることもありますし、翻訳学校には無料のレベル判定試験(私も通学を検討していた時期に受けたことがあります)や、通学相談を受け付ける窓口があることが多いので、直接問い合わせてご相談されるのが近道だと思います。

「全然もうかってないけど細々と受注している翻訳者の話」と題したいくつかの記事も、今回の記事も、僭越ながら、これから翻訳業を目指したいと考えている方に自分なりに寄り添いたいと思って書きました。これから翻訳業界に入りたいと考えている方を応援したいと思っている翻訳者はたくさんいると思います。

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