歴史と本と翻訳と ~つばめ翻訳~

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The Taming of the Queen (読書の記録)

フィリッパ・グレゴリーのThe Taming of the Queen(仮訳:王妃の調教)をようやく読み終わりました。
『ブーリン家の姉妹』の作者の本です。
the-taming-of-the-queen-9781476758794_lg.jpg
(※画像は版元よりお借りしました。)

今作の主人公はヘンリー8世の王妃キャサリン・パー。
ヘンリーの6人の妃のなかで唯一生き延びた人物です。
主人公は生き延びるし、年老いたヘンリーも少しは丸くなっているだろうと思って
ある程度明るい内容を想像して読み始めたら、逆にとんでもなく恐ろしい本でした。

フィリッパ・グレゴリーの作品は何冊も読んできましたが、
作中の「いい時期」と「悪い時期」の描写の落差にいつも圧倒されます。

王に愛され、宮中でかしづかれる
主人公にとっての「いい時期」の描写には黄金色の輝きを感じます。
主人公と一緒になってその明るさを味わっていると、
突然暗黒の世界に突き落とされて心臓がぎゅっとなる。
味方だった人が敵になり、侍女が減っていき、王と会えなくなっていく。
『ブーリン家の姉妹』から続いている
このThe Plantagenet and Tudor Novels(プランタジネットとチューダーの物語)シリーズでは、
そうやってどの主人公も黄金色のしあわせを感じたあとに暗闇でもがき、
そして命を落とす人が大半です。

キャサリン・パーの場合、黄金期は聖書の翻訳をしていた時期でした。
王に許可されて(むしろ勧められて)、ラテン語で書かれていた聖書の英訳に取り組み、
宗教家や学者と議論し、侍女たちと意見を交換しながら
神の言葉が庶民にきちんと伝わるようにと表現に苦心する姿は、
翻訳者の端くれから見るととても魅力的でした。
何より翻訳するのを楽しみ、製本された本を愛おしそうに見つめていたのが
特に印象に残っています。
それだけに、状況が変わって
翻訳はおろか、本を読むことも否定されていく流れを読むのは辛いものがありました。
学問が好きで、翻訳を楽しんでいたキャサリン・パーは、
今までに読んだ歴史小説のなかでも特に親近感を抱いた王妃かもしれません。
このときの聖書の翻訳はけっきょく世に出ることはありませんでしたが(少なくとも今作中では)、
キャサリン・パーはその後、実名で著書を出版した英国史上初の王妃となりました。

このひとつ前に読んだグレゴリー作品が
The King's Curse(仮訳:王の呪い)で、
こちらもタイトルから連想されるとおり
不吉なにおいでいっぱいのストーリーですが、
最後の最後、主人公がどうやって死を迎えるか、
ぜひ多くの方に読んでいただきたいなと思った本でした。
kings-curse-special-signed-edition-9781501107474_lg.jpg
(※こちらも版元より)

フィリッパ・グレゴリーの作品は最近あまり邦訳されていないようなのですが、
ぜひまたシリーズの続きを加藤洋子さんの訳で読んでみたいです。


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